平成27年12月の法話(2)/半田了靖師
【担 当】 半田了靖 師 〔愛知県岡崎市 崇福寺 徒弟〕
【御 題】 「いただきます」
家族でファミリーレストランに行ったときのことです、
となりの席も家族連れで、その家族に食事が運ばれてきました。
幼稚園くらいの子供が、手を合わせて、うれしそうに
「いただきます!」
と言いました。きっと幼稚園でやっているのでしょう、
すると、お母さんが、
「きょうはお母さんが作ったんじゃないから“いただきます”は言わんでいいよ」
と言われました。
私は、そういうふうに「いただきます」を理解している人もいることを知りました。
もちろん、作ってくれた人にも感謝しなければなりませんが、
もっと大事なものをいただいています。
お解りだと思いますが、
私たちは、いったい何をいただいているのか?
数年前のことです。
夏休みを利用して、農場で親子の体験教室が開かれました。
ニワトリを食べよう!という体験です。
まずは、ニワトリ小屋の掃除をします。
羽根や糞で散らかった小屋を、ホースとブラシで汗まみれで掃除をします。キレイになった小屋で、餌をあげると頭を前後に振って、目を白黒して食べるニワトリがとてもカワイくなります。
そうやってお世話をしたニワトリを、じぶんで殺して食べるのです。
ニワトリを逆さに吊します。こどもが身体を押さえ、そして、お父さんがニワトリの首を折ります。子供もお父さんも泣けて仕方がありません、
そのニワトリを、農場の人に解体してもらうと、鶏肉になります、
それを刻んで、カレーライスに入れて、みんなで食べます。
食べるとき、誰も何も言っていないのに、みんな、自然と手が合わさります。
そして、みんな「い・た・だ・き・ま・す」と言ってから食べました。
もちろん、誰一人、カレーを残す人はいませんでした。
この体験は、とても残酷で、賛否が分かれるかもしれません、
しかし、自分が食べているものが「命」であることを思い知ります。
お念仏の『南無阿弥陀仏』の『南無』とは、心からの感謝のことば、
お念仏の『南無阿弥陀仏』の『阿弥陀仏』とは、無量寿、はかり知れない命のつながりです。
わたしたちは、はかり知れない命を口にいただいています。
そして、わたしたちは、仏さま、ご先祖さまから、はかり知れない命を繋いでいただいています。いずれもいただいている命に心から感謝いたします。
「いただきます」とお念仏「南無阿弥陀仏」は同じようだと、私は思いました。
「いただきます」とお念仏「南無阿弥陀仏」をわすれずに、大事にしようと思いました。
このたび、当布教師会より法然上人800回大遠忌記念事業として法話集「法然さまからのお手紙とお歌」を出版いたしました。
法然さまが「黒田の聖人(ひじり)」に宛てた一紙小消息を、管長猊下お手ずから、わかりやすく現代の言葉に置き換えていただき、それを一区切りづつ布教師会の布教師がお説教として書き下ろしました。 また法然さまの代表的なお歌を八首取り上げ、それをテーマとしたお説教も掲載しております。
この本のお求めは、≪総本山誓願寺公式サイト「出版書籍のご案内」ページ≫ よりご購入いただけます。(一部1,000円税込/送料別)
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