聖意測り難し/令和6年3月の法話
【担 当】 佐伯良雄 師 〔愛知県蒲郡市 光明寺 住職〕
【御 題】 「聖意測り難し」
ようこそ、お越し下さいました。本年は、法然上人様が宗派をお開きになって850年の節目に当たります。上人の選択集には、私達にとって、必ずやってくる共通の苦しみ、死に対する解決策が示されています。
「南無阿弥陀仏」のお念仏で、極楽浄土に往生できるぞ、それは阿弥陀如来が選ばれた本願の念仏の力だから。その念仏を選ばれた仏様の心(慈悲)は、説き尽くすことができない「聖意、測り難し(しょういはかりがたし)」が、阿弥陀如来と私達には優れた縁がある、と詳しく丁寧に述べられています。その心は、仏の心を受け取りなさい、受け取ることが大事だぞ、と示すためです。仏の心とは、慈悲、やさしさ、恵みです。
現代社会は、技術革新によって生活様式が変化して、大変便利になっています。しかし、便利になったからといって、苦が無くなるわけではありません。逆に苦は増えています。今も昔も、「少欲知足」という仏の生き方は大事で、こういう仏の心を受け止めて生活をしたいものです。
例えば、寒いときに外で仕事をして、体が疲れ冷えきってしまいます。そこで、部屋に帰って、ストーブに手をかざします。すると、手から暖められた血液が体をめぐり、寒さが和らぎ、安らかな気持ちになります。そして、体に力が湧いてきます。体が暖まるのは、ストーブの熱ですが、この熱が縁となり、さらに力が湧いてきます。また、最近、大きな地震や水害で悲惨な災害が発生しています。その時、自衛隊員、消防隊員、いろいろな職種の方、ボランティアの方が、救助に当たられている姿を見ます。そして、日本中で多くの方が支援や募金活動をしています。被害に遭われた方々にとって、自分の力だけではどうにもならない諦めの気持ちの所に、勇気を呼び起こす力となっています。そして、災害以前の平凡な暮らしの中にも、恵みが満ちあふれていたことに気が付きます。仏の力とは、このようなものです。私自身、僧侶になって数十年になりますが、仏の恵みとは期待するものでは無く、自分が仏の心を頂いて生活することにあると実感しています。
念仏とは、唱えたから救われるというだけでなく、恵みに気が付き感謝する心が「南無阿弥陀仏」と声に出ることです。我々は、人間だから、失敗することや不平不満を言ってしまいますが、仕方ありません。ただ、やさしい言葉を使うようにする、やさしい心を見つけながら暮らしてゆくことで、測り知れない力に導かれた生活になって行くことでしょう。
南無阿弥陀仏 合掌
このたび、当布教師会より法然上人800回大遠忌記念事業として法話集「法然さまからのお手紙とお歌」を出版いたしました。
法然さまが「黒田の聖人(ひじり)」に宛てた一紙小消息を、管長猊下お手ずから、わかりやすく現代の言葉に置き換えていただき、それを一区切りづつ布教師会の布教師がお説教として書き下ろしました。 また法然さまの代表的なお歌を八首取り上げ、それをテーマとしたお説教も掲載しております。
この本のお求めは、≪総本山誓願寺公式サイト「出版書籍のご案内」ページ≫ よりご購入いただけます。(一部1,000円税込/送料別)
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